Diary of a madman

癲狂院に置かれた或る一冊のノートブック
狂気の記憶が焼き付いた、深淵なる倒錯の記録の数々。
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2006年04月04日(火曜日)

 筆無精のせいでいつも話題に乗り遅れてしまうのですが、例の事故についての一連の報道を見ていて思い出した事があります。


 子供の頃、よく叱られたものでした。
「ノドに突き刺さったらどうするの!」
「鼓膜が破れたらどうするの!」

 棒付きのアイスを食べ終わった後も棒を咥えたまま、耳掃除で綿棒を耳の中に入れたまま、家の中を動き回ったりすると、その度にすごい剣幕でそんな風に叱られました。実際は、その後も「脳の方まで刺さったらどうするの! (以後、ねちねちと続く.....)」という感じで、半ば恐怖に駆り立て脅かされる感じでした。 その後も何度かついついやってしまった時も同様にえらく怒られたので、さすがに参ってしまいそれ以後はやめました。 どちらかというと、そんな風に事故になった時の状態の想像を聞かされるのが嫌で止めたのも理由の1つなのですが、口に棒を入れたままにしていると散々聞かされたその惨状が頭に浮かんできて、怖くなってやめた、という理由の方が大きかったと思います。

 些細なことですが、割り箸をうまく割れなかった時に、ときたま ささくれ みたいなものが出来てしまう事がありますが、箸を持った時に指にそのささくれが指に刺さってしまった事もあったりしたので、以来、割り箸は今でも苦手だったりします。ノドに割り箸が刺さらなくても、そのささくれが口内に刺さるかもしれないと思うと、ぞ〜っとしてしまいます、今でも。


 そんなことを思い出しながらふと思ったのですが、やっぱり子供の頃の躾というのは大事なものなのですね。.......些細な事と思われるものまでよく指摘されて怒られたものです。例えば食事の時、肘を付いたり片膝を立てて食べたり、くちゃくちゃ音を立てながら食べたりすると、ものすごく怒られたし....。いや、今になって思えばそれは怒られて当たり前なのですし、叱ってくれた事にはとても感謝しています。

 話は少し変わりますが、綿あめはあまり好きではありませんでした。なので今日までろくに食べたことがありません。好きだったのは、水飴かな....。憶えているのは、やたら栓が大きくて、本体はちょうど一辺が7cm位の立方体のガラスの小瓶に入った、薄いエメラルドグリーンの様な緑色をした水飴で、それを割り箸ですくって2本の箸でこねて食べるのです。 ほんの少しだけひんやりとして口の中にゆっくりと広がって、きつすぎない甘さがじわ〜っとしてきて、おいしかったのを憶えています。水飴って、こねる具合によって食感が微妙に変化して楽しいものです。あまりこねなければ、とろりとした感じで、よくこねると、くにょくにょした食感でその食感が堪らなく好きでした、

 何故か暑い夏に食べた記憶があって、なんか冷えてた様な.....冷たくてとてもおいしかった記憶が.............。

 ちょっと調べてみたら、これこれ! 憶えている水飴のガラスの小瓶と全く同じ!
懐かしのふるーつ水飴
京の飴 おちゃめシリーズ

あぁ....思い出した! 青色のも食べた事がありました。あれはサイダー味だったのか.....。なんともいえない清涼感のある味でおいしかったです。緑色は、青りんご味だったのですね。

また食べてみたいな。

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2006年04月07日(金曜日)

柳生十兵衛七番勝負 島原の乱|NHK木曜時代劇

 番組開始から少し遅れてから見始めたのですが、すっかり嵌まってしまいました。

 いつもこの時間は同局の世界遺産の番組を見ていたのですが、新年度で曜日変更となったので他のチャンネルを回していたのですが、これといって見たいものが無くてNHKに回したら何やら時代劇をやっていたので、これもつまらないかも.......と思いながら眺めていたのですが、テレビ欄を見たら、「柳生十兵衛」の名前が.........!

 見ているとやがて眼帯をした十兵衛が登場。その風貌が堪らなくカッコ良い! 眼帯をしているせいか余計に隻眼が目立って、ギロリと動く目玉に凄みが感じられて、おまけにその重厚な眼帯もまたワイルドでカッコいい。ちょうど眉間にシワが寄る時の表情がとびきり良いのです。いかにも「ヤギュウジュウベエ」という感じです。

  七番勝負ということで、毎回誰か一人を斬っていくのですね。
まだかまだかと待ちかねて番組の終わり近くでいよいよ立ち回りの場面なのですが、もうこの場面が素晴らしい! 
特にハッとさせられたのがしのぎを削る際の.....刀同士がぶつかり合う音。重低音が効いていて、迫力満点。金属音というより、重金属音という感じです。すごい.....ヘヴィメタルだ!w 思わずメタリカのバッテリーのイントロが頭の中で流れてくる感じ。  とにかく刀のサウンドが素晴らしい。殺陣ももちろん素晴らしくてハラハラさせられるのですが、この重厚なサウンドが一層凄みを感じさせます。

 ..........前に大河ドラマで宮本武蔵やっていましたが、あれよりもこっちの柳生十兵衛の方が個人的には好きです。とにかく十兵衛はワイルド。あの隻眼のギロリと睨む目つきは.........さしずめ野獣の目つきといった感じ。刀を抜くのが、牙を剥くかのようにも思われます。

野獣十兵衛だ。w

というわけでおすすめ。
柳生、見るべし!w

柳生十兵衛 - Wikipedia

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2006年04月16日(日曜日)

 2、3日前まで風邪を引いていました。

先週の月曜あたりから鼻水が酷くて花粉症だと思っていたのですが、その後ノドも痛くなってきて、しまいには熱が出てしまって。38度くらいだったので別にそれほど酷いわけではありませんでした。なので、さほど寝ていなかったのですが、それのせいかどうも熱が下がった後治りが悪い.........。今は咳が酷いです。あまり咳をする方ではないので、今回の咳には驚いています。まあ鼻水も酷いのですが。鼻水....というよりは粘度の高い、黄色い鼻水ね。要するに膿んでる鼻水。..........汚い話でごめんなさい。咳も....もしかして肺病?なんて思ってしまう位でしたので(おおげさな...)、「ゴホゴホ.....もう先は長くはありません.....。あの花が咲く頃には......」なんて蒼白い顔をしたお嬢様が真っ白なシーツに身を包んで外の芽吹き出す木々を目にしながら.........だったらサマになるのになあ....なんてつい思ったり。w あぁ、その後、温かいミルクティーを入れてあげて、冷たい手をさすりながら...........なんて妄想が小1時間続きそうだ。w  あぁ....脳の方も重症かも。

 そうだよね.......男は寝込んでもサマにならない気がする。というより病弱そうな姿は情けない..........。


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2006年04月17日(月曜日)

 ついにアニメ始まりました。
といってももう2話目ですが。

 録画しっぱなしで実はまだ見ていません。アニメではコミックでのイメージと異なる場合が多々あるので、録画できてるかちらっと再生した時に、「何か違うな.....」と思ってしまうと、もう見る気が失せてしまう事があります。 スクールランブルはまさにそれで、録ったはいいがそのまま一度も見てなかったりします。今春からまたスクランのアニメが始まりましたが、見ていませんし録画もしてません。コミックも惰性で買っている様な状態です。

 アニメ以前にコミックでそれ以降買う気が失せてしまったものが多くて、何か良いものはないかと時々探っていますが、なかなか見つかりません。ずっと前に紹介しましたが、「ガンスリンガー・ガール」。あれは第1巻目のカバーイラストに惹かれて買ったのですが、どうもいまひとつでした。少し前に、「やさしいからだ」という3巻分で完結しているコミックがあって気になったので買ったのですが、やっぱりいまひとつでした。電撃とかイーブレイン関係のものはやっぱり自分には向いてなさそう。コミックのジャケ買いはリスクが大きいかも。最近はカバーイラストだけは妙に気合いが入っていて、おっ、と思わせられても中身を見たらクオリティが全然違ってた、とかそもそもカバーイラストと中身の雰囲気が違う.........みたいなのもあったりするので、難しい。


 そんな中、ホリックだけは当たり。大当たり。カバーイラストはもちろん、各扉絵のどれも素敵だしコマ割りの中の絵でも見とれてしまうものが少なくありません。仮にセリフを読まなくても楽しめそうな程です。まあ好みの要素が多く含まれているのが大きな理由だと思いますが。

 ゴシック、魔術、妖怪、アールヌーヴォー......別にミュシャっぽいとかそういうわけではないので、アールヌーヴォーかどうかはすごく個人的見解ですが、通じるところはあると思います。ああ、あとそれに登場人物の侑子さんがファムファタル.....。


TBSアニメーション「xxxHOLiC」公式HP
やっぱりアニメよりもコミックの方の画風が良いと思います。

Amazon.co.jp: 「xxxHOLiC 」シリーズ

 とにかくおすすめです。

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2006年04月20日(木曜日)


「アイーダ・ゴメス  カルメン/サロメ」

 いつか見てみたいなあ.....。

 実は前回の「サロメ」の公演を知った時は、すでに上演中でした。確か.....あの時は、Bunkamura「The Museum」で、「モネ、ルノワールと印象派展」を見に行った時でした。Bunkamura内のあちこちであの深紅のポスターが貼られていて、「サロメ」の文字が否が応にも目に飛び込んでしまって。(前回の公演はサロメだけだったはず。) この時の公演の話題は新聞なんかにも取り上げられていたので少しは知っていました。オペラのサロメといえばシュトラウスのものが有名ですが、このサロメはフラメンコ・バレエを取り入れた異色的な扱いを当初されていたようでしたが、結果的には好評だったようで、それが今回の再来日の実現にも影響しているのではないでしょうか。

 公演を見た事はありませんが、実はテレビで見た事はあります。BSでやっていたのですが、それはサロメの作品+舞台裏や制作秘話、プロフィールなどの映像も盛り込んだ、ドキュメンタリー的な映画でした。まさかテレビで見られるなんて思いもしなかったので、なんだか夢の様でした。

 作品の前に制作内容や舞台裏の映像が流れていたのですが、これがとても興味深かったのです。振り付けや衣装、音響等、随所にさまざまなアイデアがこしらえてあり、古めかしいダサさを排除して斬新な手法を使ったことがよく分かりました。全体的に見れば、このフラメンコ......というよりは異国情緒な雰囲気が意外にもサロメにマッチしていた様に思えます。


 そもそも、サロメを題材に多数描いたギュスターヴ・モローも異国情緒を取り入れて描いていました。例えば「ヘロデ王の前で踊るサロメ」では、背景に描かれた建物もビザンチン風のものでしたし、サロメの衣装も部分的にインド風でした。奥に立っている処刑人のいでたちは毘沙門天の風にもみえそうだし、反対の奥で奏でている楽士達が手にしているものは琵琶やシタール風の楽器です。

 でも、それがなぜか妙に似合う。これがいかにもな、西洋の王女様風の衣装だったら却ってサロメ像をぶち壊しかねない気がします。部分的でしたがシュトラウスのサロメの、7つのヴェイルの踊りの場面を見た事がありますが、その時の衣装がまさにそれで、舞台も全体的に白っぽくて、かなりがっかりしたことがあります。ですから、このアイーダ・ゴメスのサロメ像は(少なくとも自分には)似合っていると思えるのです。

 サロメ役のアイーダ・ゴメスもスレンダーで綺麗だし、最後にわなわなと手を震わせながら自らの首を横に切る様に、ヨカナーンの首を懇願する仕草なんかは素晴らしいものです。相手役...すなわち預言者ヨカナーンの役の人が、肌の黒い、がっちりとした人で.....これってヨカナーンじゃないよね.....って思っていたのですが、あの雰囲気には似合っていました。結局のところ、いろいろな要素において、西洋風ではない異国的な、見方によっては野性的で情熱的なものを散りばめているのだと思います。


 ちなみにこのアイーダ・ゴメスという人、その映画で触れられていたのですが、子供の頃、転んだ時に背中を痛めてしまい、長い間曲がってしまった背骨を矯正する為に器具を取り付けていたのだとか.....。バレエのレッスンの費用もとてもかかったらしくかなり苦労してきた人の様です。


 あぁ.....そんなわけで再来日してまたもサロメを演るなんて思いもしなかったので、今回の公演にはびっくりしています。ふと思ったのだけど、こういうのってひとりで見るのってあり? .........仮に友達誘って一緒に....っていうのもこの作風だとヘンだし、ま、仮の仮として彼女がいて誘って見たとしよう.....見た後に覚醒しちゃってファムファタルなんかになったらどうしよう......。その後修羅の愛が待っていそうだ。.......って居ないし見ないからあり得ないけれど。( ´・ω・)

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2006年04月21日(金曜日)

 先週、利用しているレンタル鯖の「XREA」が落ちました。

.........正確にはちょっと違う様で、上位レジストラから「xrea.com」のドメインの使用を停止されてしまったことによるダウンのようです。どうやらXREAの無料サーバに置かれているサイトが詐欺行為を行っていたために、上位レジストラから勝手にドメインの使用を止められてしまった結果によるものらしいです。

 落ちたとは言っても、「xrea.com」をアドレスに含んでいない→独自ドメインを使っている、うちのサイトは無害でした。ただしメールやFTPに繋がらなかったので、何かトラブルを起こしている事は気付いていました。幸い2、3日で直りましたし特に不満はありませんでしたが、独自ドメインを持たないサイトの管理人さんは、さぞ大変だったと思います。やっぱり....1日でもサイトが見られなかったら困るでしょうし、メールもしかり。自分のメールも普段もろもろの連絡手段として使っているので、ちょっとでも受信不能になると焦ります。


 そんなわけで、有料サービスを利用しているXREAユーザーには、1ヶ月の無料延長という措置が採られました。個人的には、そこまでしなくても......という気持ちでしたが、もちろん大歓迎です。 XREA以前に利用していたサーバはそれに比べたら天と地の差でした。全データは吹っ飛ばすし、復旧にめちゃめちゃかかったし、対応も悪いし、詫びの代わりのサービスもなかったし.........。

 まったく、XREAはよいところです。料金も低いし、容量も1GBだし、htaccessなどにももちろん様々な機能もついているし、至れり尽くせりですもの。

 今回のダウンはたまたまでしたし、利用し始めて3年目になりますが、今日の今日までサイトが見られなくなった事は一度もなかったし。

おすすめです。
XREA
VALUE DOMAIN:バリュードメイン

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2006年04月24日(月曜日)

 ........書こう書こうと思いつついつのまにか2年も経ってしまいました。

 ロートレック〜葡萄酒色の人生〜(直リンだとトップに移動してしまうのでコピペで)
http://www.biograf.cz/filmy/1999/02/lautrec/index.html
  という映画についての感想を交えつつロートレックについて書こうと思っていたのですが、感想をうまくまとめられず下書きのままいつのまにか放ったらかしにしてしまいました。とはいっても相変わらずの事、たいしたことは書けないのですけれど。


 この映画は、ほとんどロートレックの生涯を綴った内容になっていますが、見た後調べたところではスポットとして当てたのはシュザンヌ・ヴァラドンとの恋愛だったようです。ロートレック、ヴァラドン共に画家で、ロートレックは死後になって人気が高まり、ゴッホの様に破滅的な画家としても有名です。ヴァラドンは同じく画家のユトリロの母親として名が知られていますし、同時期の画家のルノワールやドガのモデルを務めていました。この映画の内容がどこまで事実に基づいているのか詳しくは分からないのですが、手持ちの画集の解説やネットで調べた情報と照らし合わせると、おおよそ史実に忠実な内容の様です。


 今でこそ、ロートレックの風貌や人柄を少なからず知っていますが、まだ名前くらいしか知らない頃は、ロートレック(アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック)という名前の響きに随分と紳士的なイメージを抱いていたのですが、写真(上)を見てそんなイメージは消し飛んでしまいました。写真を見て不思議に思われるかもしれません。子供の頃に誤って足を骨折してしまいそれ以降その足が成長する事はなかったそうです。原因は、両親の近親間の婚姻によるものだと言われています。

 フランスでも指折りの大富豪と知られていたトゥールーズ家の御曹司としてそれまで寵愛されてきたのが一変、その奇形から見放されてしまい、その後の活路を見出そうとした結果、画家になる事を決心します。ちなみにトゥールーズ家は絵の上手い家系だったことで知られています。


 パリに移り住んでやがて夜の歓楽にふけるようになります。よく....酒と女に溺れてゆくようになる....つまりこれが破滅型の画家の端的な表現ですが、個人的には「溺れた」という風にはあまり思えません。もちろん結果的にはアルコール中毒と梅毒により命を落とします。しかし、彼は大変な美食家だったといいますし、性欲が「人並みはずれて」旺盛だったと言われています。また自身の境遇に屈する事なくひょうきんで明るい性格だったとも言われます。そして言うまでもなく大富豪の生まれであるのです。それらから察するに、溺れた、堕ちた...というようなネガティブな風には感じられないのです。ほとんど無尽蔵にある財力を元に、「純粋に」 したいことをしたいままにしたまでのことで、その結果その止めども無い欲望に身体がついてゆけなかっただけなのだと...........そう思っています。なので彼がそれほど不幸だったとは思えないのです。それでも「破滅」はしていることには違いはないのかもしれませんが。

 この映画でも描かれている様に、シュザンヌ・ヴァラドンという一人の女性に愛されています。その関係は長くは続きませんでしたが、映画を見た限りでは幸福の時間であったに違いありません。その頃の場面がまたまぐわってるところばかりで、一瞬違う映画を見ているのかと思ってしまう感じでしたがw、満ち満ちる葡萄酒の様な雰囲気が感じられました。共寝して朝起きてxxx、朝ご飯食べてたらxxx、シュザンヌをモデルにして絵を描いていたらxxx、ワインを飲み交わしながらxxx............(*ノωノ)
 ついでに書いておくと、シュザンヌ役の女優がまためちゃめちゃ綺麗な上に身体も素敵で......実際のシュザンヌはどうっだったかは知らないけれど、ま、あれだったらああなってしまうのも当然です。w 


 「大きな注ぎ口のついたコーヒーポット」と自らをそう評していた様に、絶倫だったロートレックにとってシュザンヌひとりでは満足できなかった...と何かでそう書かれていたのですが(ソースは失念)、それのせいで娼館に入り浸っていったのだという推測もできます。また酒...とりわけアブサンの飲む量がしだいに増えていきます。アブサンというのは、麻薬性のあるアルコール度数の高い緑色の酒で、これで身を滅ぼした芸術家は多いです。ロートレックの他に画家ではモディリアニがアブサン漬けになっています。

 そんな荒廃し始めたロートレックに気性の激しいシュザンヌは怒り上がってしまって、もう大変。アトリエ内に並べられていた酒の瓶をなぎ倒し立て掛けてあったイーゼルをぶちこわしてアトリエ内はめちゃめちゃに.....。娼館に居すわっているのを察したシュザンヌが押し掛けて、「アンリ、出てこい!」なんて罵声をあげたや否や、「アンリをだせっ!」と、娼婦相手に詰め寄ったりで、もう迫力満点。w

 そんな争いもやがて終わりすっかり愛想を尽かしてシュザンヌはアトリエから出て行ってしまうのですが、それ以降ロートレックもすっかり娼館が住処になってしまいます。


 ロートレックと言えばムーランルージュ。ポスターを手掛けた事で有名ですね。素早く描写することに長けており、踊り子や娼婦の絵をたくさん残しています。時々、ルポタージュ的だとも言われる様に、当時の風俗を題材にしてありのままに描いたのですが、他の画家と違う点は同じ境遇の世界に浸りその中からの視線で描いているということだと思います。決して娼婦達を軽蔑することはなく、..........映画を見た限りでは、友達みたいな間柄の様。娼館での朝食で娼婦から「アンリ、ポテト食べてく?」なんて声かけられて、何十人も並ぶ長いテーブルに一緒に腰掛けて、食べている場面がありましたが、あれはちょっと異様というか可笑しかった。ひとりだけ背の低い男が入り交じってにこにこしながら食べているんだもの。と同時に妙に微笑ましくも感じるのでした。

 ただし、手持ちの画集の解説には、ロートレックがアルコール中毒になった理由として、毎晩その娼婦達から飲まされていた事が原因だと書かれています。当時、酒の量に応じた報酬でもあったので、できるだけたくさん飲ませてあとは外へ放り投げてタクシーへ送らせていた.....とか。なかなか強かで抜け目ないですね。

 ちなみに....娼館はかなり大きな建物で、1階が大広間で客が品定め(?)するための場所で、カンカンやったり踊ったりする所で、2階が個室になっています。前述の様に広い食堂はもちろん中庭なんかもあるような感じ(....だったはず...)。ロートレックが、閉ざされた空間内での共同体、女子修道院の様な場所であることに興味をそそられたという理由もあったようですが、確かにそういう雰囲気がありました。

 なるべく史実に基づいて映画化されていると思われますが、その中でも演出臭いなと思ったのは、いつもの様に部屋で娼婦(2人)を描いている最中に、いきなりある客が入ってきて、誰かと思いきやなんとロートレックの親父だったのです。お互いに気付いて親父は逃げようとするのですが、他の3人はやる気満々。「ベッドも2つあるし、しようしよう」なんて言ってるし.........。w 

 その辺りまでが楽しめますがそれ以降は、だんだん悲惨になってゆくので見ていて可哀想に思えてしまって......。梅毒感染されて、水銀注射されるし、アルコール中毒の悪化で譫妄(せんもう)状態に陥って精神病院に収容されてしまうし、どうにか退院でき家に帰ろうとするのかと思いきや、開口一番「ムーラン街へ!」なんだもん。もうほとんどヨロヨロ状態で歩行もおぼつかないのに、それでも笑顔で向かってしまうのを見ると、開き直っているのか、それともそれで楽しんでいるのか.......もうどうでもいいからとにかく欲望の果てまて突っ走る、って感じがして本人がそれを望んでいたならそれで良いけど見てる方は痛々しかったから心境は複雑です。


 最後の臨終の際の演出は史実通りか分かりませんが、遺体を運ぶ途中、道際から娼婦達が「バイバイ、アンリ」みたいなノリで笑顔で見送って終わりでした。ちょっと作ってる感じがしたのでいまいちでしたが、結局のところロートレックにとって見送られるにはあれが一番だったのかもしれません。


 そういえばこの映画で知ったのですが、ムーランルージュってとても明るい雰囲気なのですね。......それまでずっと、妖しくて暗い感じだと思っていたのですが全然違いました。「天国と地獄」をバックに大音量で流れる中、フレンチ・カンカンの華やかで(健全ではなく)健康そうな明るい妖しさが満ちあふれていました。

ARC :: Henri de Toulouse-Lautrec (1864-1901)
Musee Toulouse-Lautrec(トゥールーズ家の屋敷を改装して美術館してある)
MOULIN ROUGE (Site Officiel)ムーランルージュのオフィシャルサイト。今でも変わらず営業していて観光名所になっています。

左絵から順に、「Moulin Rouge」、「The Englishman at the Moulin Rouge」、「Woman with a Black Boa」。「Moulin Rouge」はロートレックと言えばまず引用される絵の1つ。このポスターは公開当時から好評でした。「The Englishman 〜」は、群馬県立美術館で「西洋の誘惑」展において展示されていました。石版画なのであちこちにあるようです。ちなみに展示のものは...確か三重県立美術館だったはず。 少ない線で表情や雰囲気を的確に表すのはさすが、ロートレック。モネ、ゴッホ、ドガ等と並んで日本の浮世絵に影響を受けたことが、平面的でシンプルな作風がポスターには打ってつけだったのでしょう。「Woman with a Black Boa」は、日本国内では検索してもヒットしなかったのでマイナーなのかな....。でも個人的にはここ最近お気に入りです。

 .........他にも好きな油彩画があるのですが紹介しきれない.......。ポスターが有名ですが、個人的には油彩画の方が好きです。顔の表情が独特なのです。どこか儚げで物憂い表情をしているのが多くて、それに....ロートレックの背が低いのが関係しているのか、肖像画などはこちらから見上げた様に描かれているものが見受けられます。そういうのが表情に表れているのかもしれません。今まで何度かロートレックの油彩画を間近で見た事がありますが、その展覧会のトリがモネやルノワールだろうと、自分にはロートレックの絵が一番輝いて目に飛び込んで来るのです。

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