Diary of a Madman

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大琳派展

大琳派展 ~継承と変奏~| 尾形光琳生誕350周年記念

 先月末に一度観てきたのですが、今日ふたたび観に行ってきました。
開催期間36日という短い間に琳派の集大成というべき作品数、そして国宝、重文の作品も数多く、非常に見応えのある内容で、いたく感動した次第です。

 数年前に、東京国立近代美術館で琳派展が開かれましたが、あの時とは趣や作品数などかなり異なっていました。あの琳派展は全体的な作品は控えめで、尾形光琳はもちろん俵屋宗達の作品はかなり少なく、展示後半は独自の解釈として、琳派のスタイルが窺える、琳派とはまるで関係のない画家の作品を取り上げていたりと、なかなか意外性のあり楽しめましたが、今回の展示は王道の内容でした。本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳・乾山、酒井抱一、鈴木其一と、琳派の流れを汲む作家の作品で占められていました。ここが凄い。今回の展示を見るまで、これほど琳派の作品があることを知りませんでした。


 今回、なぜ2回も観たかと言うと、それはずばり期間内の展示替えで一度では観たい絵が観られないからでした。事前に公式サイトから展示目録に目を通していたので、最初からそのつもりでした。特に絶対観たかったのが、俵屋宗達の「風神雷神図屏風」、尾形光琳「燕子花図屏風」。どちらも国宝に指定されている作品です。あいにくこの2作品の展示が前後期と分かれていました。国立博物館や国立近代美術館などの所蔵ではないので、なかなかお目にかかれないものですし、近場で観られるのなら是非と思いわざわざ2度も足を運びました。


 しかし、それに見合う感動でした。もうなんて言ったら良いやら..........国宝だから良い、というのではないのです。それをいうなら、知らなかった鈴木其一の「風神雷神図襖」は衝撃的でした。「風神雷神」のオーソリティである俵屋宗達のそれはやはり見事としか言いようがありませんが、鈴木其一の「風神雷神」もすばらしいです。襖8面......幅5、6mはあるのでしょうか、その大パノラマに大胆に余白を空けた中に浮かぶ風塵と雷神。後期の展示では、俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一のそれぞれの「風神雷神図」が一堂に集まり、同じ空間に飾られているその景色といったら!!!!!!  その中でも鈴木其一のは一番躍動感が感じられました。琳派の中でも一番最後の人とあって、過去の風神雷神図を参考にオリジナリティのあるものにしようとしたのでしょう。それまでの屏風絵でなく襖絵である点、風神雷神の纏う衣のうねる様な表現、背景のたらしこみ技法による雷雲と風の表現、この雷雲と風の表現が一番描かれていたと思います。

 展示室内で聞こえる話に耳を傾けてみると、多くの人が「やっぱり俵屋宗達のが一番。迫力がある」という意見でしたが、確かに俵屋宗達のは時代がまだ安定していない安土桃山・江戸初期ということもあってか、鬼神のような重厚さと気迫さが漂っています。尾形光琳、酒井抱一のそれぞれは、どこかデザイン的な、どちらかというと絵の内容よりも見た目を意識した様な、そんな気がしました。鈴木其一のは、モダンながら轟く雷鳴と激しい強風の音が聞こえてきそうな臨場感があり.........個人的な表現だと、RPGに出てきそうなモンスターと言うかビーストのような感じでした。ゲーム画面でサウンドエフェクトと共に出現した瞬間のような、そんな感じです。鈴木其一のが一番お気に入りかも。

 
 琳派といえば、身近な植物をモチーフとした絵、これがまた素敵すぎるのです。タチアオイやキキョウ、ウメ、サクラ、アジサイ、ユリ、アサガオ、カキツバタ、日本に昔からある身近な存在の植物たち。その植物を写実的というよりはデザイン的に配置、描かれたその絵の美しさ。展示室どこを観てもそんな絵ばかりでしたから、もう感無量です。前後期あわせて6時間くらい観ていたと思います。自分も植物が大好きですし描かれている植物のいくつかを育てていることもあって、それぞれの植物の良さを本当によく捉えていると、いたく感心しました。大仰しい絵ではないのです。掛け軸というと固くて近寄りがたいような雰囲気を想像してしまいますが、そういう感じではなくて、もっと瑞々しくて柔らかい感じがあって、和ませる様な、そういう雰囲気です。そういう親しみのある内容がとても好きです。

 こんなに充実した内容ゆえか、展示期間が短すぎます。1ヶ月ちょっとですよ!? しかも期間内にちょこちょこと色いろ作品が入れ替わっています。実際には前期後期というわけではなくて、6期に分かれています。期間内通して展示されている作品が大半なのですが。


 展示も明日で終了という時に、勧めるのも時既に遅しですが、近くの人は是非ご覧になる事をお勧めします。見逃した人も、将来またどこかで琳派展が開かれる時には是非ご覧になってください。日本人ならこの良さは文句無しに分かるはず。


 ............余談。1度目を観た時は、実を言うと東京都美術館で開かれていた(現在も開催中)の「フェルメール展」を同日に観たのですが、正直なところ、フェルメールの作品も良かったですが心に深く印象に残ったのは「大琳派展」でした。よく美術館に足を運びますが、近年観た展示会の中では個人的に一番かもしれません。それくらいすばらしかったです。

 ちなみに公式サイトのデザインも好きです。アーカイブ保存してしまいました。

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