「風神雷神図屏風」や「燕子花屏風」などの他に気に入った作品のうち、いくつかの感想を。
伝俵屋宗達「桜芥子図襖」…上部に描かれた降り注ぐ様に鏤められた桜の花と下部の芥子の花の対照的なデザインがすてきです。琳派にはそういう対照的な組み合わせが多いように思えます。対照的なモチーフを組み合わせる事によって両者をより際立たせるのかもしれません。
尾形光琳「孔雀立葵図屏風」…兎に角、描かれているクジャクがすばらしい。経年変化の色合いの結果もあるのでしょうが、描き込まれた一枚一枚の羽が気品と風格を感じます。クジャクの刺青というならこういうのでないと。緑、青、赤.....原色でないところに良さがあると思います。対照的なタチアオイとの組み合わせもいい感じ。
酒井抱一 「夏秋草図屏風」…前回の琳派展でも飾られていた作品。元は尾形光琳「風神雷神図屏風」の裏側に描かれていたというネタで有名な屏風です。風神雷神に合わせて、風に吹かれ雷雨に打たれる様が叙情的に描かれているところが好きです。ミュージアムショップで、これのミニ屏風を買ってきました。きちんと二曲一双になっていて作りもしっかりしていて、その分値段も高めで悩みましたが(5250円)、買ってきて正解でした。
酒井抱一「柿に目白図」「柿図屏風」…柿の木.....終わりゆく秋の面影を残すかのような数個の柿の実と、しなやかに伸びた枝振り。たわわに実っているわけではないところに良さがあると思います。数カ所の鮮やかな柿色が程よいアクセントになっているというか。観ていて自分だったらもう少し柿の実を描いてしまうだろうなあと思いました。
俵屋宗達「唐獅子図杉戸」…琳派というよりも安土桃山文化の豪奢な感じがする荒々しく威厳のある雰囲気。気に入ったのが唐獅子の表情とそのポーズ。重厚だけれどもしなやかな体の曲線が観ていて心地よいというか見事に「嵌っている」感じで好きです。
きもの…前回の琳派展では尾形光琳が手掛けたとされる小袖が2着あったと思うのですが、今回は江戸時代に流行した琳派のデザインの着物が数点飾られていました。.........去年観られたら、去年の年賀状での着物の柄を描くのに苦労しなかったかも。w 流行したというのだから当時はもっとたくさんあったのでしょう。そう思うとうらやましいですね。
蒔絵…精緻な作りが見事です。硯、硯箱、戸棚などに綺麗な装飾が施されているのです。動植物がデザインされているのですが、和むというか可愛いらしさと上品な具合が組み合わさっていて......「ひとつ欲しい....」なんて声がよく飛び交っていましたが、同感です。それをいうなら展示作品全部に言えますが。w
鈴木其一「萩月図屏風」…このほかの其一の作品もそうなのですが、他の絵師の作品と比べて、どこか落ち着いていて、空気に溶け込むかの様な雰囲気を感じました。さらっと薄めに描かれているせいでしょうか。屏風よりも掛け軸の作品では特にそう感じました。例えば茶室に飾られることを意識してのことでしょうか。光琳や抱一とは異なる雰囲気がまた好きです。
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ところで、今回展示会場となった東京国立博物館。上野駅からそこへ行く途中に過ぎる国立西洋美術館で妙に気になる展示会がありました。「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展」。その長くカッコいい響きの名前で記憶に残ったのもそうなのですが、ポスターに使われていた絵を観て、非常に興味がわきました。自分が無知なのもあるのですが、初めて聞いた画家です。西洋美術館のレストラン「すいれん」でご飯を食べたついてに、売られていたカタログをちらっと見たのですが、「静かなる詩情」という副題が付けられているのがぴったりな内容でした。特に何もない部屋.....開いた扉に格子窓、奥に覗かせる隣の部屋。黒いドレスを着た女性の後ろ姿。写実的なのに幻想的な雰囲気。絵の中に描かれた主題が見るものに訴えかける様な感じのものではありません。どちらかというと見るものが絵の中に誘い込まれる様な....そういう感じです。
とても嵌りそうです。まだ展示しているので.......観に行きたいな。
ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情 Vilhelm Hammershøi:The Poetry of Silence
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