Diary of a Madman

癲狂院に置かれた或る一冊のノートブック
狂気の記憶が焼き付いた、深淵なる倒錯の記録の数々。
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7つのヴェイルの踊り


「アイーダ・ゴメス  カルメン/サロメ」

 いつか見てみたいなあ.....。

 実は前回の「サロメ」の公演を知った時は、すでに上演中でした。確か.....あの時は、Bunkamura「The Museum」で、「モネ、ルノワールと印象派展」を見に行った時でした。Bunkamura内のあちこちであの深紅のポスターが貼られていて、「サロメ」の文字が否が応にも目に飛び込んでしまって。(前回の公演はサロメだけだったはず。) この時の公演の話題は新聞なんかにも取り上げられていたので少しは知っていました。オペラのサロメといえばシュトラウスのものが有名ですが、このサロメはフラメンコ・バレエを取り入れた異色的な扱いを当初されていたようでしたが、結果的には好評だったようで、それが今回の再来日の実現にも影響しているのではないでしょうか。

 公演を見た事はありませんが、実はテレビで見た事はあります。BSでやっていたのですが、それはサロメの作品+舞台裏や制作秘話、プロフィールなどの映像も盛り込んだ、ドキュメンタリー的な映画でした。まさかテレビで見られるなんて思いもしなかったので、なんだか夢の様でした。

 作品の前に制作内容や舞台裏の映像が流れていたのですが、これがとても興味深かったのです。振り付けや衣装、音響等、随所にさまざまなアイデアがこしらえてあり、古めかしいダサさを排除して斬新な手法を使ったことがよく分かりました。全体的に見れば、このフラメンコ......というよりは異国情緒な雰囲気が意外にもサロメにマッチしていた様に思えます。


 そもそも、サロメを題材に多数描いたギュスターヴ・モローも異国情緒を取り入れて描いていました。例えば「ヘロデ王の前で踊るサロメ」では、背景に描かれた建物もビザンチン風のものでしたし、サロメの衣装も部分的にインド風でした。奥に立っている処刑人のいでたちは毘沙門天の風にもみえそうだし、反対の奥で奏でている楽士達が手にしているものは琵琶やシタール風の楽器です。

 でも、それがなぜか妙に似合う。これがいかにもな、西洋の王女様風の衣装だったら却ってサロメ像をぶち壊しかねない気がします。部分的でしたがシュトラウスのサロメの、7つのヴェイルの踊りの場面を見た事がありますが、その時の衣装がまさにそれで、舞台も全体的に白っぽくて、かなりがっかりしたことがあります。ですから、このアイーダ・ゴメスのサロメ像は(少なくとも自分には)似合っていると思えるのです。

 サロメ役のアイーダ・ゴメスもスレンダーで綺麗だし、最後にわなわなと手を震わせながら自らの首を横に切る様に、ヨカナーンの首を懇願する仕草なんかは素晴らしいものです。相手役...すなわち預言者ヨカナーンの役の人が、肌の黒い、がっちりとした人で.....これってヨカナーンじゃないよね.....って思っていたのですが、あの雰囲気には似合っていました。結局のところ、いろいろな要素において、西洋風ではない異国的な、見方によっては野性的で情熱的なものを散りばめているのだと思います。


 ちなみにこのアイーダ・ゴメスという人、その映画で触れられていたのですが、子供の頃、転んだ時に背中を痛めてしまい、長い間曲がってしまった背骨を矯正する為に器具を取り付けていたのだとか.....。バレエのレッスンの費用もとてもかかったらしくかなり苦労してきた人の様です。


 あぁ.....そんなわけで再来日してまたもサロメを演るなんて思いもしなかったので、今回の公演にはびっくりしています。ふと思ったのだけど、こういうのってひとりで見るのってあり? .........仮に友達誘って一緒に....っていうのもこの作風だとヘンだし、ま、仮の仮として彼女がいて誘って見たとしよう.....見た後に覚醒しちゃってファムファタルなんかになったらどうしよう......。その後修羅の愛が待っていそうだ。.......って居ないし見ないからあり得ないけれど。( ´・ω・)

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