Diary of a Madman

癲狂院に置かれた或る一冊のノートブック
狂気の記憶が焼き付いた、深淵なる倒錯の記録の数々。
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2008年賀状

  

 


 上段3枚が年賀状です。作り始める前から思い描いていたのは一番右のものでした。しかし元日になっても上手くまとめられず、結局元日に年賀はがきに印刷したものは一番左のもの。背景なし....のままにするわけにもいかず急遽魔法円を用意し、それから文面を思いつきました。元日にこちらに届いた年賀はがきがいつもより多かったので、それで済むと思っていたのですが、こういうときに限ってか翌日の2日、3日にも続けて、しかも普段来ない方からも届き、それらのお返事はまとめて3日に出しました。その頃には何とか背景もうまく合わせられていたので、上段真ん中の背景付きのものにして送りました。せっかくなので微妙に文面も変えました。というのも先に送った方の文面を考える際に「Guardian」か「Summoner」のどちらにしようか迷っていたからでした。

 そもそも今年の年賀状のデザインの意味というと...........、普段ネコにやられっぱなしのネズミにほんの少しだけ肩入れしてやろうとソーサレスが魔法でネズミに飛行能力を身につけさせてネコから襲われないようにしてやった、というものです。右下のネコは両手を上げても届かなくて悔しがっている様を意図して描いたのですが、見方によっては降参しているポーズにも見えますね。

 そんなつもりでしたので、護るとするならやはり「Guardian」、しかしハガキサイズでレイアウトしたもの(上段左と中央)だと着物の中からわんさかとネズミたちを召還しているようにも見えたので、「Summoner」もいいかなあと思って、悩みましたが「Guardian」より馴染みの薄い「Summoner」にしました。


 ちなみにソーサレスが使う魔法っていうのも作る前は漠然とした内容で別にどうでもよいことでした。そもそものアイデアは、振りかざす扇に魔力が込められていて、そこにネズミを乗せると耳が大きくなって空を飛べる、というつもりでした。空を飛んだり宙に浮かんでいたりするアイデアは昔から好きな要素です。それだけで世界は広がりファンタジックな雰囲気にもなるのでついついやってしまいます。


 話を戻して、その後ようやく本来のアイデアを具体化できたのが上段右のものです。下書きもこういう配置でした。扇からネズミが次々を飛び立って(この絵では反時計回りに進んでいます)、最後にうまく飛び立っていく様子です。 上段中央ではまだ線画しか用意していなかったテーブルも配置して、イラストの枠もオーナメントで飾りました。まだまだ描き込みたかった箇所が山ほどあるのですが、一応の形としてなんとか出来た、という具合でしょうか。

 ちなみに下段の2枚は、おまけです。........おまけというよりはこれだけ作り込んだんだよ〜〜〜っっっ!!!っていう作者の遠吠えの具体化みたいなものでしょうか。実を言うと左の着物の柄はきものの本を参考にして描いたものです。つまり元ネタがあるというわけです。主に参考にしたのは中央の花柄と少々参考にした裾の部分です。その参考元は、「美しいキモノ」の2007年の秋号の裏表紙の広告です。美しいキモノNo.221 広告の片隅に「琳派百図展」とあったので調べてみると、その名の通り「琳派」の図柄をきものに活かし、それを毎年制作・発表しているようです。

..............そもそもの話、なぜ着物姿を描こうかと思ったのには理由があります。初めて描く人物画なので、いきなり難しいポーズを描くのは無謀過ぎます。また洋服だと体型のラインを描かなくてはいけません。これも初めては難しいと思い、それならわざと寸胴にするくらいの和服の立ち姿にすれば楽なのではないかと思ったからです。確かに身体のラインは比較的楽でしたが、制作途中で気づいたのですが、きものはそのシンプルな体型ゆえに、写真ならともかく描くとなるとあまりにもあっさりしすぎて、他の要素で補わないと味気ないものになってしまうようでした。それで苦労したのがきものの柄でした。琳派の柄は比較的シンプルなモチーフの連続ですし、「けばい」ということもない。それでいて気品があって華やかさもあるという、まさに日本の美のバランスを上手く保ったデザインであると思います。

 また参考にした広告の写真がとても良かったのです。まずトーンが黒とアイボリーの組み合わせでした。このトーンの組み合わせはお気に入りのひとつです。大好きなフランスの紅茶の銘柄であるマリアージュ・フレールのパッケージもそうですね。とにかく重厚さと気品さ、派手ではないが華やかさがあり落ち着きがある、そんなイメージを表すトーンだと思っています。アイボリーはきもの、黒は背景のテーブルと家具でした。最初は気づかなかったのですがよく見ると、壁にかかっていた額縁が彩度を落として壁の色と同化されていました。レタッチされていますね。
 それを見てしまったので、西洋風の室内に琳派の柄のきものは合うのではないかと思い、どうせなら同じ植物をモチーフとして多用するアール・ヌーヴォー様式の室内が良いと思って、これも様式から則って別のものから参考にしました。ただしトーンは黒と金色を基調にしました。それが下段右のもの。..............でもまだ未完成のままです。PhotoshopElementsで塗りつぶしかグラデーション塗りをしただけです。よく見ると影もない....という有り様ですので、ちょっと単独で見せるのは恥ずかしいものがありますが、これのせいで丸2日はかかったものですから何が何でも背景にしてやる!と意気込んだのでした。w これを作らなかったら年内に投函できたもん。


 そんなアイデアでしたが、もっとさかのぼるとこのアイデアにたどり着く前に2つほど漠然としたアイデアがありました。12月の初め頃.....ちょうどブログでうんうん唸っていた最中ですね。1つは、背中にネコの刺青を施した女性が横たわっていて、ネズミたちがそれを見て驚いているというもの。2つめは、カジノでポーカーをするネコとネズミで、ネズミは女性、ネコは男性で頭部だけがそれぞれ動物に置き換わっていて、目は萌えイラストのそれ、みたいな感じで、共に黒を基調としたドレスとスーツを纏っていて、ロイヤルストレートフラッシュか何かでネズミが勝つ場面というものでした。前者はサロメも好きだしマネのオランピアみたいな雰囲気でいけたら良いなと直感的に感じたのですが、よく考えてみると年初めにはがきで刺青やヌードはないよなあ.....と考え直してやむなくボツにしました。背中だけ見せる程度ならいいよなあ、なんて改めたりもしたのですが、構図的に難しいし、クラシックの絵画を参考にするのはあまりにも無謀でしたのでやめにしました。後者のものはけっこう乗り気でした。ラ・トゥールの「いかさま師」みたいに背中にカードを隠し持っていてネコ男をぎゃふんと言わせる....みたいなアイデアも浮かんで、決め台詞は「あけましておめでとう」をもじって「負けましておめでとう」なんてのも思いついてひとりでにんまりとしていました。w でも............カジノの風景なんて細かそうだしキラキラ輝く様な室内を描くのはやっぱり無謀とも思えたし、構図もふたりが対峙しているポーズにしなくてはいけないし、衣服もレースを使ったドレス....なんてものは、いきなり手出しできるようなものでもないので.........アイデアは良かったのですがやむなくこれもボツにしました。でもいつかどちらも描いてみたいアイデアです。なので盗らないでね。 ...............少し前のブログを読み返すと何となく雰囲気が読み取れると思います。


 最終的に決めた年賀状のアイデアも、元をたどればそれらの2つのアイデアが元になっているとも言えます。あの左手を挙げたポーズは、ずばりモローのサロメからです。びしっと手を挙げて扇をふりかざして凛とした表情で臨む.....そういうスタイルが個人的には最高のシチュエーションなので、立ち姿で最小限の動きで表すポーズといったらそれしか自分の好みには似合わないのです。また、何者かが危機を必ず救ってやる、というのも好きなシチュエーションの1つです。とりわけそれが悪魔だったり堕天使だったり....あやしげな魔力の助けで救うのがお気に入りです。イラスト内に入れた文面もそういうわけです。「光輝があなたを守り、天の光があなたの人生を照らしますように」というメッセージです。年賀状に付けるメッセージにふさわしいものですし、それは作った自分に対しての意味でもあります。


 諸々の要素を1つにすると冒頭に載せたイラストになるというわけです。


制作の話はまた別に書きます。(くどい)

........あ、あと、年賀状の手書きメッセージが乱れていたのは徹夜明けのせいにしたいです。(ぉぃ

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